さて。
「……今更なこと聞いていい?」
風呂から出て来た蒼志とリビングから早々に撤退して、部屋で髪を拭く姿を見ながら先程の質問をぶつけてみようと思う。
「俺たちって、付き合ってんの?」
ベッドに腰掛けて隣に座って、ちょっと声を落として聞いてみる。
蒼志はそう言った瞬間、一度止まって、すぐに俺の頭を叩いた。
「いっ!」
「だったら先の別れ話は何なんだ、付き合ってねぇとしない話だろこの馬鹿」
「いや、……いや、ごもっともなんですけど、確認、みたいな?」
「何度でも言ってやろうか?俺はお前が好きで、お前は俺を好きで、付き合ってる。何か違うところあるか」
「……ない、です」
父さんの言う通り、怒られた。というより呆れられた、に近いか。
「…なんでにやにやしてんだよ、気持ち悪い」
「酷くない?仮にも好きな相手に対して」
「お前の質問の方が酷ぇだろ」
「うん、ごめん」
あの引っ掛かりは何だったんだろう。
付き合ってると自分でもわかっていたはずなのに、聞きたくなったのは。
「司」
「ん?」
「お前相当馬鹿だな」
「え」
「形にして安心したかったのか何なのか知らねぇけど、そう言う馬鹿げた質問は早いうちにしとけとよ」
……そっか。
そうだよなぁ、それしかないよな。
ただ、不安だったのか。明確な言葉で、流された場じゃなくて、蒼志からきちんと俺の居場所を提示して欲しかっただけだ。
「……俺、重い奴かも」
「どうだか」
「何それ」
「俺も似たようなもんだ」
「…そっか」
何で、こうなってしまったんだろう。
でも、こうなって、良かったんだろう。
「寝よっか」
明日、というか今日は起きたら桜にふたりで謝り通しだ。
でも彼女が笑ってくれるなら、何だってしてあげる。
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