「ただいま」
未だ明るい玄関。
ただいま、と声に出すと、ばたばたとリビングの方から音が聞こえ、俺を出迎えてくれたのは、やっぱり父さんだった。
「司、…おかえり」
「うん、……ただ、いま」
それが誘発剤になったみたいで、またみっともなく涙が溢れる。
父さんはそんな俺に何も言うことなく抱き締めて、寒くないはずなのに温かくて、やっと帰ってこれたと、実感出来た。
「あっちゃんも、おかえり」
「……すみませんでした、司のことも、桜のことも」
「そのことは、後で話そうか。ね。だから先に上がりなさい」
「…はい」
父さんは俺から離れて、父さんより大きい蒼志の頭を撫でた。
言われた通りに靴を脱いで、リビングに向かう。
こんな時間だ、桜は勿論寝ているのだろう。
明日、謝らないと。ごめんねって。
「司はまず、お風呂入ってきなさい。それから手当てしよう」
「え、でも、」
「ゆっくり温まっておいで」
俺が風呂に入ってる間、父さんは蒼志と話すつもりなんだろうか。
父さんが蒼志と一緒に居るのはやめろ、とは言わないと思う。だけど、何を言われるかはわからない。
「蒼志」
「いいから、行ってこい」
「………わかった」
蒼志も俺がいない方が話せることもあるかもしれない。
ここで駄々をこねる意味もないし、おとなしく従って風呂に向かうことにした。
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