「もしもし、父さん?…うん、俺。心配かけてごめん。もう大丈夫、……うん
少ししたら、帰る。だから、待ってて。……うん、連れてく」
俺の携帯は手元にないから、蒼志に携帯を借りて家に電話をかけた。
すぐに父さんの声がして、すごく心配をかけているのはわかったけど、それでも、今ここで蒼志と話をしない訳にはいかなかった。
いつも桜と昼に遊ぶ公園は、夜になれば全然ひとがいない。
バイクを入り口付近で停めてもらって、蒼志は近くの自販機でふたつ、アイスコーヒーを買った。
その近く、自販機の仄かな灯りの近くで、佇む。
「……ありがと」
「………」
「…………あの、さ……」
プルタブを開けて、コーヒーを口に含む。
少し口の中が痛んだ。
「………」
「………」
どれから、言おう。
口を開いては閉じ、俯いて、コーヒーを飲むために顔を上げて、また俯く。
あっという間に半分無くなったところで、俺と同じように俯いていた蒼志と、同時に顔を上げ、目が合った。
「司」
「……」
「…別れたい訳じゃ、ない」
「え、」
「……でも、無理だろ」
「なんで、…無理、とか、」
「…これからも、同じ目に合わせる場合だってある」
「…そんなのわかってる、でも」
「あの場所から抜けたって、俺が原因でまた巻き込むかもしれない」
「……わかってる」
「そんなので、許される訳な、」
「ッわかってるって言ってるだろ!」
蒼志にしては、随分弱気だと思った。
俺がまた巻き込まれるだとか、怪我するだとか、そんなのはわかってた。
だけどそれを原因にされるのは、辛い。
「痛いし!怖いし!またあんな目に合いたいはずないだろ!」
「だったら、」
「それでも別れたくないって言ってんだよ!」
「……親父さんは、別れろって言うだろ」
「なんでそこで父さん出てくんの?別れる理由に俺が駄目なら父さん使うってこと?」
「っそうじゃねぇよ!」
「じゃあ何だよ!」
蒼志の胸倉を掴むと、先程まで手に持っていた缶が当たり前のように落ちる。
ふたつ、落ちる音。
「…言ってよ、全部。全部聞くから、」
俺の思ってることを、聞いてよ。
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