不良とシスコン、時々天使 | ナノ


「っざけんじゃねぇ!」

後ろからそれはもうおっそろしい程の怒声が聞こえ、動かす脚が縺れそうになった。
でもここで捕まったらもっと恐ろしいことになるに決まってる。

「そいつ捕まえろ!!」

喧嘩している人達の間を縫って、あと極力巻き込まれないようにしながら出口の方まで走る。
けど、あの男の声で何人か気付いてしまったらしい。

目の前に数人、どう逃げようか何て考えているうちに、背中をがつりと蹴られ、前に転げてしまった。

「…あーあー、くそ痛いんだけど、調子乗んなよ、ほんと」

倒れこんだ俺の上にさっきの男の脚が強くのしかかり、胃だが肺だが圧迫されていく。
今日こんなんばっかだ、俺。


蒼志と会わなかったら、こんな痛い思いもしなかったのかな、とか。
ここに来た時と同んなじことを考えて。


「……その脚退けろ」


結局、同じ答えにしかならなくて。


「……うへぇ、何でここにいんの、津田」

どうしてこう、この男は。
こんな間が良いんだか、悪いんだが、そんな時に来てくれるんだろう。

「蒼志、」

もしかすると、煽ってしまったかもしれない。
でも、…うん、嬉しかった。
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