開かれた、と言うより蹴破られたと言った方が表現的に正しいかも知れない。
その先には蒼志が立っていて、何だ、もう、それだけで正直泣きそうだった。
ただ俺と目が合った瞬間に、始めて喧嘩を見た時よりもずっと怖い顔をしていて。
怒ってるなって言うのが良く分かる。
あんな顔見たこと無いし、あんな低い声も、…本当に人を殺してしまいそうなあんな雰囲気も。
知らないし、きっと、誰にも見せたこと無いんだろう。
「…うっわ、怖ぇー」
隣の男の間抜けたそのままの感想にさえ反応出来ない位には、俺も驚いていた。
「なあ、嬉しい?」
「……何で」
「だってあれ、お前のために怒ってんしょ?」
俺のため。そうか。俺がここに居るからか。
嬉しいかそうじゃないかって聞かれたら、俺のために怒ってくれてるなら、嬉しくないこともないけど。
「誰があれ止めると思ってんの」
「止める必要あんの?」
「ある」
俺のために人殺しとか、ふざけんなって話だ。
たかだか高校生なんだよ、俺たちは。
普通の、高校生。
不良でも喧嘩強くても、ただの高校生だ。
「殴ってでも止める」
蒼志が何と言おうが、どうしようが。
だってそれが俺の役目だから。
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