side 蒼志
蹴散らしても蹴散らしても湧いてくる連中が煩わしい。
「まだ来ねぇのか…!」
「もーちょいだって!多分!」
近くで一緒になって薙ぎ倒している陸も、この状況が面倒なんだろう。苛ついた様に容赦無く殴り飛ばしていた。
思ったより相手方は人数が多く、前にさえ中々進めない。
くそ、こんなことに時間掛けてるって場合じゃないってのに。
「あ!あっくん、来た!」
「遅いんだよあいつら!」
「それは同感ー!」
バイクのライトが周りを照らし、こちら側の人間が漸く着いたらしい。
やっと、だ。
あいつらにもう任せて良いだろう。
気を取られてる連中の間を縫って、走って入口に向かう。
俺や陸に向かってくる奴らはあいつらが食い止めてくれるだろう。
一々誰かを相手にしてる時間さえ勿体無い。
早く。
あいつを殺してやりたい。
それは司が許さないだろうから出来ないとしても、殴らないと気が済まない。
余裕なんてものは全く無くて、力任せに店の入口の扉を蹴破った。
「はは、いらっしゃい、津田」
外と同等かそれ以上に人間がいる空間の中心で、小綺麗な顔をした男が笑っていた。
「待ってたよ」
「御託は良い、司はどこだ」
「そこに」
フロアの後ろの端、ここから一番離れた場所。
違う男の隣に。
…ああそうか、頭に血が上るって言うのは、こういうことか。
「……殺す」
司が止めようが、どうしようが。
駄目だ。こいつだけは。絶対に。
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