騒がしい室内の中心で、あのリーダー格の男と、それ以外の沢山の人が好き勝手にやっている。
その部屋の端っこで、俺は変わらず後ろをしっかり縛られたまま、何故かソファーに座っていた。
「……何で、あんたらは蒼志のこと、そんな恨んでんの」
隣に居るのは見張りとして、最初俺を連れてきた奴だ。
歳はそう変わらないだろう。童顔か、大人びた中学生じゃない限り。
「別にー」
「……はあ?」
「そりゃリーダーは、女のこととか、あと喧嘩の強さとか?そう言うので殴ってやりたいとか思ってんだろーし、他の奴らも大体そう」
「あんたは」
「面白そうだから」
「………」
「正直、津田が殴られてんのとか興味ないっつーか。あいつ結構殴られてたこと多かったし、血だらけになってんのも結構見てたし、そこはどうでもいい」
「………」
「ブチ切れて喧嘩するのだけは見たことなかったから、それ見たかっただけ」
…何だろう。
俺としてはあの美人も勿論怖い。けど、こいつもどっか違う方向に、怖い気がした。
純粋に楽しんでるだけっていうか、自分が楽しめれば手段問わずなところが、特に。
でも何より桜をひとりにさせた原因はこいつだから、どんなに怖くてもそれは絶対に許さない。
「…だったら緒方とかでもいいだろ、仲良いし」
「緒方ぁ?無理無理、あいつ強過ぎ。津田と同んなじ位だし、捕まえらんねーもん」
「へぇ、……あんた、弱いんだ」
「あ、何それ、挑発?」
こんな安い挑発には流石に引っかからないか、と思ってたら、隣の男は片手で俺の首を掴んだ。
……苦しくはないものの、男の目は、嫌そうに細められ、こちらを見下ろしている。
「津田の目の前で殺してやろうか」
出来るもんならやってみろ。
桜が笑ってるところを見るまでは、絶対生き抜いてやる。
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