後ろに腕を回されて、縄か何かで手首を縛られる。
逃げないようにってことだろうけどこの状況で逃げれる訳ないし、もう少し緩めて欲しい。血が止まりそうだ。
するりと漸く目隠しが外されて、眩しさに目が霞む。
「……へえ」
低い声は、すぐ側で聞こえた。
「普通の高校生ってのは、本当だった訳だ」
前髪を掴まれて顔を上げさせられ、やっと光に慣れた目に映ったのは、楽しそうに口を歪めた茶髪の男だった。
目鼻立ちのはっきりした、恐らくハーフかクオーターか、日本人らしくはない顔。
美人、という言葉が似合いそうな男。
「……」
「怖い?」
「……そりゃ、勿論」
「はは、正直だな」
きっとこんな状況じゃなきゃ、単純に綺麗な顔だなと思えただろう。
でもその綺麗な微笑みが胃をギリギリと締め付ける。
「何でここに連れて来られたと思う?」
「蒼志を、呼ぶため」
「そう。あいつをぶん殴るため」
このひとは、きっと頭が良い。
こんな人数が居て、蒼志に直接喧嘩をふっかけないのは、正攻法じゃ敵わないと知ってるからか、それとも、絶対的に追い詰めたいからか。
「…蒼志がここに来る保証なんて無いのに」
「絶対来る」
「何で」
前髪を掴んでいた手を離され、周りに聞こえないように耳元に呟かれた言葉に、ぶわりと、鳥肌が立った。
「だって、友達でも、仲間でもないんだろ?」
知ってる。このひとは、俺達のことを。
「ま、ここに居る連中の中でわかってるのは、ほんの少しだから」
至近距離にある、髪と同じ色の瞳。
混じり気のない硝子が、俺の顔を見ていた。
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