side 蒼志
はっと目が覚めると、何故か陸が携帯を構えていた。
「……ああ?」
「うわ目付き悪ッ!」
いらっときて携帯を掴んで床に叩きつけようかと思ったが、そういえばここはあの家だと気付いてやめた。
「あっくんぐっすり寝てたし、それに、ねえ?超レアだし撮っとこうかなって」
「それより何でここに居んだよ」
身体を起こそうとしたら、ぐ、っと服を引っ張られた気がした。
そういえば、一緒に寝てたか、とそこを見る。
「……桜?」
「あ、蒼志起きたんだ」
おはよう、いやそんな時間じゃないけどさ。
寝る前まで抱き込んでいたはずの声が、台所の方から聞こえた。
「桜があっちゃんと一緒がいいって言うから」
「……お前いつ起きた」
「父さん達が帰ってくる前」
ちゃんと二時間以内に起きたらしい。
…起こせよ、と思ったが、多分俺がそれ程深く眠っていたんだろう。
「父さんと桜が外で丁度緒方と会ったから、連れてきたんだって」
「……」
「いやほんとだからね!声かけたら家くる?って誘って貰ったんだって!」
……まあ、色々世話になったとこもあると言えばあるし、…いやそもそもこいつが原因の部分もあるが、そこは目を瞑ってやる。
俺の服を掴む桜をそのまま抱き上げながらソファーに座った。
「司ちゃん、あの写真やっぱ送って」
「えー」
「司、お前何撮った」
「桜だよ、桜」
「司」
「そこに蒼志の寝顔が映っただけですー」
「消せよ」
「やだよ」
桜が膝の上で寝てるお陰で強行手段に移ることも出来ない。
リズム良く司が鳴らす包丁の音と共に溜息をついた。
「良かったね、あっくん」
「あ?」
「司ちゃんと、うまくいって」
にやにやしてんじゃねぇよ、くそ。
← top →