絆創膏を貼るのも、ガーゼを切るのも、包帯を巻くのも、久しくしてなかった所為か、それとも他の理由か、少し手間取った。
その間、俺も蒼志も無言で、部屋の時計が刻む音しかしない。
リビングに行ったら、父さんや桜を起こすかもしれなくて、俺の部屋に連れてきて、ベットに座らせて、手当てをした。
「……怪我、」
「……」
「最近、してなかったのに」
最後に、肩付近の紫がかった痣に湿布を貼り終えて、そう、呟く。
蒼志はそんな俺をじっと見て、低く、呟き返した。
「お前の、所為だ」
「……俺?」
「お前が、…怪我すんなって、言ったから」
「……」
「言ったお前が傍にいないんじゃ、意味、ねぇだろ」
何なんだ、その理屈。
俺は、そんな意味で言ったんじゃない。
蒼志が、怪我すること自体が、嫌、だったから。
「……」
「……」
また、無言が続く。
どう切り出せばいいのか、わからない。
普段の喧嘩とか、そういうのとは少し訳が違う。
だから、流したら、いけない。
いい加減、終わりにしないと、いけない。
「……蒼志」
「………なんだ」
「蒼志は、困るかもしれないけど」
俺は、蒼志が。
「すき、だ」
目を見開いた蒼志に、俺は歪に笑うことで、どうにか心臓を落ち着かせていた。
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