「ねぇ、佐藤」
「……」
「付き合っちゃおうか、私達」
「……」
「傷の舐め合いみたいかもしれないけど」
「……」
「寂しいもの同士で、忘れちゃおうか」
忘れることが、出来るなら。
「馬鹿じゃねーの」
「はは、そうだね」
水内は、最初からわかってた様に、頷いた。
忘れることが出来るなら、それも、良かったかもしれない。
ただ、お互いに、そうなることは、望んでなかった。
「中学の時、多分、本当に、佐藤のこと好きだったよ」
「そっか」
「でも、今はそういう好きじゃない」
「知ってる」
「佐藤が付き合うって言ったら私、佐藤のこと嫌いになってた」
友達まで失うなんてごめんだ。
俺達は、この距離で、満足なんだから。
「……なんで、また、そんな怪我してんだよ、」
玄関まで走って、あいつを見つけると、初めて会った時みたいに、血だらけだった。
「っ、ばか、だろ…!」
そんなに怪我してるなら、今日じゃなくても、俺は、待ってたのに。
「……司」
「……なん、だよ、」
「手当て、してくんね?」
何、言ってんだ、そんなの。
「そんなの、…当たり前だろ」
袖で、目にかかってる血を拭う。
額付近の傷はまだ血が止まる程経ってないみたいで、拭っても、すぐに目の淵に流れ落ちた。
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