「じゃあね、佐藤」
「ああ、服、ありがとな」
「いーえ!ばいばい、桜ちゃん」
「ばいばーい!」
夕飯は食べて行かないらしい。
でも近いうちに食べに来るだろう。
「桜ー、夕飯どうしよっか」
「はんばーぐがいいー」
「えー、この間食べたのに?」
「うんっ」
睡眠もとって元気な桜はもう今日の夕飯はハンバーグを食べる気でいるようだ。
うきうきしてる姿が可愛い。
「あっちゃん、きょうこない?」
「……うん、そうだね」
梅雨の頃、桜は同じ質問をした。
あれからまだ三ヶ月も経ってないんだなぁと思って、その短いようで長かった間、こんなにも変わってしまった。
「ねえ桜」
「なーに?」
「桜は、水内のこと好き?」
「すき!」
何の屈託も迷いもない、純粋な好意。
「蒼志のこと、好き?」
「すき!」
俺も、それだけなら良かったのに。
「つーちゃんは、ももちゃんのこと、すき?」
「そうだね、好きだよ」
傷の舐め合いと、水内は言った。
それは、確かだ。
水内に誰を好きになったとか言わなかったけど、それについては何も聞かれなかった。
気付いてるのに、気持ち悪いとか、そういう風には言わなかった。
理解のあるやつだった。
「つーちゃんは、」
「……」
「あっちゃんのこと、すき?」
付き合おうと、水内は言った。
「すき、だよ」
もう、何も考えたくなかった。
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