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雪の日、彼を見ました。彼は雪と同化しそうなくらいに真っ白な肌と、真っ白な髪をしていました。瞳は青と緑の中間の色のようでした。凍っているあの川と同じくらい、透き通っていました。
積もっていく雪。私が彼の傍に近付くと、彼はその綺麗な長い睫毛を伏せ、ふらりと雪の上に倒れ込みました。
服装を見て、すぐに彼が隣国の騎士だとはわかってはいました。しかし私は――

「……何だこの報告書は」
「ありのまま書いたつもりっすけど」
「却下」
「じゃあどうしろっつーんですか!」
「あの男の容姿だとかはどうでも良いんだよ!」
「だってすっげぇ綺麗だったんすよ!?」

数十枚に渡って書かれた報告書をばしりと突っ返され、アルトは不満げに唇を尖らせる。上司であるラウリは机を大袈裟に叩いて立ち上がり、もう一つ、机の上に置いてあった書類の束で彼の頭を引っ叩いた。

「いてっ」
「いいか、これを良く読め。と言うか読んでいるはずだろう」
「え、……あ!!」

アルトは頭を掻きながらその書類を受け取ると、一ページ目に、銀髪の男の写真が貼り付けてあった。
あの男だ。
数日前の、雪の日。アルトが拾ってきた男。
ノア・ベイルマン。と、書かれている。

「何だ、誰だかわかってるんじゃないすか」
「わかってるから問題なんだろうが」

『ノア・ベイルマン。王国騎士団、第三部隊副隊長。第三皇女暗殺事件の際、第三部隊の隊長、副隊長、及び第三部隊全隊員の死亡を確認。なお、亡骸は……』

「……死亡?」
「そうだ。隣国では、そう公式に発表されている。それが、何故、今。この国に居る?」

ラウリは椅子に座り直し、呆然と紙を見つめるアルトを睨み付けた。
先日の、第三皇女暗殺事件。隣国であると言え、こちらにも大きな衝撃が走った。第三皇女と言われているが、彼女は正室の子供。王位継承権は第一皇子に次いで二位である。彼女は美しく、国交のあるこの国でも人気があった。
その彼女が暗殺され、また、精鋭を集めた騎士団ひとつが壊滅。
隣国で何かが起こり始めているのではないかと、噂されていた。

その矢先に、だ。

「……厄介なもん拾ってきやがって……」
「仕方ないじゃないっすかあ!綺麗だったし!」

アルトの行動の理由は、全てにおいてベイルマンが『綺麗だから』であった。
頭が痛い。ラウリは何でこんな面倒ごとを起こすんだ、とアルトをぎりぎりと睨み続ける。対してアルトは相変わらず飄々としていて、まるで気にしていないようだ。

「だからって拾ってくるんじゃねぇ!しかもお前あの時あの場所って完全に仕事さぼってたな!?」
「だって暇で!!」
「言い訳はいい!とりあえずベイルマンのとこ行って起きたら聴取してこい!」
「え、いいんすか?」
「だ、から何でお前は嬉しそうなんだ!減給するぞ!!」
「ああああそれは勘弁してください!!」
「もういい、さっさと行け!」
「了解しましたぁ!」

大声で怒鳴り付けられたアルトは急いで部屋を飛び出す。

ベイルマンは今、特別医務室に居るはずだ。アルトは唇を弧に描き、急ぎ足でその部屋を目指した。



******
って言うファンタジーが書きたいなって。
まだCPは決めてません。

アルト:とある国の騎士団隊員。20歳くらい。腕っぷしは強い。基本へらへらしてる。
ラウリ:とある国の騎士団団長。アルトの上司。32歳くらい。苦労性。
ノア:とある国の隣国の騎士団副団長。死亡されたとされていたがアルトに拾われる。年齢不詳。

とある国と隣国は国交あるし表面上は仲は良いけど、実は裏ではぎすぎすしてる感じ。

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