がさりと木々が揺れ、隣に居た女子が、悲鳴を上げる。
「きゃあッ!」
「……大丈夫か?」
「ご、ごめんね、」
二人一組の男女ペアで、森の中を一周してくる、という何ともまあ単純な肝試しを、クラスのメンバーで行っていた。
がさがさと、何かが近付いてくる音がする。
…段々、近く、なってくる。
一緒に行動してる女子もそれがわかったようで、ふるふると怯えるように俺の腕を掴んだ。
「ど、どうしよう、にげ、にげよ、?」
「……」
ぼわり、光が見えて、まるで――人魂のように。
「やだ、もうこわ、怖い…ッ」
女子を隠すように、見せないように、わからないように、抱えた。
がさ、がさがさがさがさ。
近い、音。
どく、どく、心臓が、冷える。
がさり。
「お、仲間発見」
「あ、やだ、お邪魔しちゃった?」
「「…え、」」
「いや、何か俺ら変な道入ったらしくて、誰か探してたんだよ」
「よかったぁ、見つかって」
「……お前らふざけんなよ」
「っふ、うぇ、うわああああん!」
まさかの同級生だった。
ふたりはあっけらかんとしていて、俺達の恐怖をまるで理解していない。
すると普通の人間が出てきたことに安心したのか緊張の糸が切れたのか、腕の中にいた女子が、声を上げながら泣き始める。
さすがに俺がずっとこうしているわけにもいかないので、腕を離して、もうひとりの女子の方に背中を叩いてやれば、飛びつくようにその女子に抱きついた。
「あーあー、ごめんね、驚かせちゃったか」
「怖かったよぉ…っ」
…何だかこちらこそ見てはいけないものを見ている気がした。
いや、女子だからいいのか。
それから、結局四人で、森を一周することになった。
「頑張ってんじゃん」
「……何だよ」
前方に女子ふたりが歩き、後ろを俺達男子が歩く。
隣にいる奴と組んでいた方の女子は、どうやらこういう系に強いらしい。
今まで一緒に居た女子を引っ張るように進んでいた。
「さっき、女子守ってたからさー」
「ああ、…まあ、仕方ないだろ、あれは」
「でもお前さ、」
するとまた、がさり、音がした。
「きゃッ!」
「だいじょぶよー、鳥だもん」
そうか、鳥か、驚かすな。
「…怖いんだろ、こういうの」
「……うるさい」
気が付いたら咄嗟に、俺は、隣にいた奴の服の裾を掴んでいた。
……条件反射、というか、何というか。今まで気を張ってた分、ぶっちゃけてしまえば、怖くて仕方ない。
「手繋いでてやろうか」
「結構で、」
差し出された手を叩き落とそう、と。
がさがさ。音、が。
「ッ!」
「…ぶふっ」
…叩き落とそうとしたが、思わずそれを掴んでいた。
畜生、俺の根性なし。
「ほら、女子達のが先行ってるし、行こうぜ」
「……おう」
不本意ではあるが、腰を抜かして完全に立てなくなるよりはマシだ。
前方の女子達には見えないように、こっそり、そのままでいてもらった。
もう肝試しなんかしたくない。
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twの方でフォローして下さってる方からネタを頂きましたのでホラー第二弾でございます。
今回のほうがより怖くない分、BL要素強めですね、前回に比べたら。
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