「お前が退学にならない理由だがな」
「はい」
「ひとつは、今までの生徒会の行動を見ても、あのしつけ方は間違ってなかったこと」
「…しつけって、犬じゃないんですから」
「どっちかってと親のしつけ方だったがな」
「……」
「ふたつめは、そもそも暴力って言う程のことはしてないってこと。一方的ではあったがな。最後みっつめは、転校生及び生徒会がお前に対して好意を抱いたこと」
ひとつめは、飲み込んでおく。
ふたつめは、まあそう見て貰えたからラッキーだ。
が、みっつめがよくわからなかった。まったくよくわからなかった。
「質問してもいいですか」
「おう」
「転校生及び生徒会の人たちはマゾなんですか」
「違いねぇな」
げらげらと再び笑い出した委員長に補足するように、副委員長は苦笑を浮かべながら小さく頷いた。
え、その頷きはなんですか。
「しかられたことが無かったようで、自分達の間違いを指摘してくれるのはあなたしか居ないと、思ったそうですよ」
「はあ…?」
「それで、うちの委員の出番だ」
笑い疲れたのか飽きたのか、委員長は急に真面目な顔で俺の手を取る。
ある意味懇願に近い格好で俺を見やる彼に、ちょっとときめいたとかは心にしまっておこう。
「お前を転校生及び生徒会専属として、風紀に引き入れたい」
だが言った台詞には全然ときめかなかった。
何だ、転校生と生徒会専属って。意味わかんねぇ。
「現段階で、あいつらを真っ当に導けるのはお前しかいねぇんだよ」
「風紀委員全員が、あなたを望んでいます」
副委員長まで加わった。
圧力を掛けられるようにまた二人の視線が注がれる。
だから美形に見られると以下略、やめて欲しい、こんなの、こんなの卑怯だ。
「頼む」
「御願いします」
「……わかりました」
所詮俺は平々凡々な人間だ。
断りきれるわけがない。
渋々頷いたら、勢いつけて委員長と副委員長に抱きつかれた。
何だか、これからも受難は続きそうです。
**********
風紀委員に転職したおかん。
この後親衛隊に感謝され、転校生に懐かれ、生徒会役員に(主に尻を)狙われ、風紀委員でもおかんな立場で頑張っていくと思われます。
もしくっつけるなら、風紀の誰かですね。
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