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「つまり、飯を邪魔されたから啖呵を切った、と」
「はい」
「本当にそれだけか」
「………ちょっと普段からあの方々に苛ついてましたすみません」
「ああ、それは同意してやる」
「…………俺、退学、ですかね…」

あの転入生及び生徒会一同を土下座させてしまった件について、風紀委員長に委員室に連行された俺は、ソファーの上で縮こまっていた。
机の上には副委員長が置いたお茶があるが、手は出せない。
緊張して手汗もやばい。
委員長はニヤニヤしながら俺の言葉を軽くメモっているようだ。くそ、他人事だと思いやがって。むかつく。
そんなこと言えやしないけど。


「退学なぁ…」


10分位嫌な間が続いてから、低く委員長の男前な声が広がる。
相変わらず良い声だ。そんなもの、今思ったって現実逃避だってわかってるさ、でも逃げたい、現実から。委員長は、助けてくれたり、…はしなさそうだな。

「…停学とか、休学程度に、」
「無理だな」
「う……」

…わかってる。
平民でしかない俺が、王様に立て付いたようなものだ。
普通の世界じゃなくとも、俺たちが暮らしているのは、その普通じゃない世界に違いない。郷に入っては郷に従え、ルールを破った俺は罰せられても仕方が無いんだ。



「委員長」


鼻水と涙が一緒になって出そうになって俯いていると、呆れたような溜息と委員長を呼ぶ副委員長の声が近くで聞こえた。
少し顔を上げたら冷めたお茶を交換しに来てくれたらしい。しかもさっきと香りが違う。違う茶葉なんだろう。え、何、このひと気が利きすぎじゃないか。

「何だ?」
「いい加減、彼で遊ぶのはやめた方がいいんじゃないですか」
「勝手にこいつが悪い方向に考えてるだけだろ」
「捕まえられなくなりますよ」
「そりゃあ困る」

俺の知らないところで話は進み、馬鹿みたいに二人の会話を聞いていると、急に二人の目がこちらを向いた。美形に見られると、睨まれていなくても怖い。


「おい」
「あ、はい、」

瞬時にしゃきんと背筋を伸ばすし、委員長の方を力を込めて見やった。
判決の時ですか。
いいですよ、もう、腹をきめます。



「風紀委員に入れ」



………ん?



「…は………?」


今、何て言った、この人。



「ふは、ひでぇ間抜け面」
「当たり前でしょう、まったく…」
「あ、の、話に、ついていけません」

委員長は爆笑し、副委員長がちゃっかり何時の間にか俺の横に座ってまた溜息をついていた。
どういうことだ、色々もうキャパオーバーである。

「風紀はお前の威勢の良さを気に入ったってわけだよ」
「で、でも、退学って、」
「俺一言もお前は退学だって言ってねぇえけど?」
「いやそうですけど…」
「さっさと頷いとけ」
「いやいやいや」
「承諾しか俺は認めない」
「お、横暴だ!」
「ほらほら、落ち着いて。委員長もふざけてないで、きちんと説明してあげてください」

委員長の言葉に思わず立ち上がった俺は副委員長諌められ、本当に頭がパンクしそうな俺は、頭を抱えながらソファーに落ちた。

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