甘くて、苦い。 | ナノ


唇を、合わせる。

「「………げ」」

ふたりして、眉を寄せた。
マズイ、キス。

「……てめぇ、また煙草吸っただろ」
「勝手だろ」
「未成年の癖に」

風紀を取り締まる彼は、煙草が嫌いなようだった。
それでも、やめるつもりはない。
いつから吸いはじめたのか、学校の代表とも言える自分がしていいことではないけれど。
要は、会長である時に、ばれなければ良いのだ。

「お前も、口ん中甘ったるい」
「さっきガトーショコラ食った、生クリームつけて」
「……馬鹿じゃねぇの」

聞いただけで胸焼けを起こしそうだ。
普段はあんなに厳しく生徒を締めているくせに甘いものが好きな彼とのキスは、お互いに反発する。

苦い、甘い。

お互いに知らない味が、交換される。
甘ったるい、煙草。

「やめろよ、煙草」
「お前が甘いの食うのやめたらな」


恐らくずっと、自分たちはこの味なんだろう。

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