▽蒼志がこたつでぬくぬくしてたら風邪引いた話
「寝たくなる気持ちもわかるけどさ」
「……熱出るとは思わなかったんだよ」
「そんだけ蒼志も疲れてたってこと」
ぴぴぴ、と電子音が響いて蒼志から体温計を受け取るとそこそこの熱だった。
彼が不調を訴えるなんて珍しいと思っていたら、炬燵でうっかり寝てしまったのが原因らしい。
普段そんなことしないから、余程疲れてたんだろう。だからこうして熱を出している、と。
「お粥、食える?」
「ん」
ベッドからだるそうに上半身を起こした彼の隣に座って、小さめの土鍋からお粥をお椀によそう。
「ほら、口開けて」
「……そこまでしなくていい」
「え?だってこんな弱ってる蒼志珍しいし」
レンゲで掬って、まるで桜を看病した時みたいにふーふーと息を吹きかけて冷まし、口元まで運んでやる。
ちょっと嫌そうな顔をしたけど、こんなチャンス滅多にないんだから構わないだろう。
「ほら」
「………あ」
「……ん、熱くない?」
「………ちょうどいい」
それならよかった。食欲もあるみたいだし、この分じゃもう少し寝れば体温も下がってくれると思う。
「…自分で食う」
「駄目」
風邪の時くらい、甘やかしたい。
いつだって、気付いたら俺がそういう立場に置かれるんだから。
ふわり、汗で湿った蒼志の髪を撫でると、彼は不機嫌そうに咳き込んだ。
※こいつら付き合ってない
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