▽下からのキスはジャスティスだと布教するために書いた話
「司」
「んー?」
「こっち来い」
「何?」
胡坐をかいて手招きする蒼志に言われて、畳んでいた着替えをそのまま抱えたまま、ずるずるとそっちの方に膝立ちで歩いた。
近くまで寄ると腰を引き寄せられて蒼志の額が肩にあたる。
普段は見上げていたから、彼の旋毛を見ることは珍しい。
思わずそのまま口付けてしまった。
そんな行動に蒼志も驚いたのか、顔を急に上げるものだからものすごく近くで見つめあう結果になった。
そうしてしまったら次にすることも思いつくようになっていて、恥ずかしさも相まって目を閉じることになってしまう。
重なる唇。離れて、すぐにまた塞がれる。
後頭部に回った掌が、逃げることを許さない。
合わさったまま舌で唇を撫でられた。うっすらと開けると同時に舌が入り込んで、咥内を荒らされる。上顎を舌先で擦られ、ぞくりと背筋が震えて、絡まり始めた舌と、聞こえ出した水音が脳髄に染み込む。
いつもは上からされる行為。
今は自分が優位なはずなのに、そんなことも考えていられない。
そっと瞼を開けると籠った瞳に腰が砕けそうになった。
蒼志の喉仏がこくりと上下して、かっと顔が熱くなる。
肩を押して離れられるならそうしたかったけど出来る力もとうにない。置いているだけの手。
激しくなる深いそれにもうどんどんと体力が奪われていく。
完全にへたり込んでしまった。
それなのに蒼志は許してくれない。
苦しい。頭がぼーっとする。
唾液が顎を伝って首筋まで濡らす。
体重をかけられたら身体は崩れて、床に打ちそうになる頭は蒼志が押さえている手のおかげで痛みはなかったけれど、もう、本当に蒼志しか見えなくなった。
漸く解放された時には目の前がちかちかする程で、零れた唾液を蒼志の舌が舐め上げる動作に身体が勝手に跳ねてしまう。
放り出された着替えはまた皺になるだろう。
それをどうすることも出来ない俺は、諦めて蒼志の首に腕を回した。
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