「さんたさんくる?」
「良い子にしてたらねー」
「となかいさんも?」
「うん、きっと来てくれるよ」
「…ずっとおきてちゃだめ?」
「夜更かしする子は良い子かな?」
「……おてがみ…」
「枕元に置いておいたら?」
「うん!」
パジャマ姿になってそわそわと落ち着かない桜を抱き上げて、そっと言い聞かせる。
俺もこの位の時はサンタクロースに会うんだって躍起になっていた気がする。
母さんに寝なさいって言われて、渋々布団には入るんだけど、絶対起き続けてやるんだって想いながら。
まあ結局、気付いたら朝って言うのは、誰でもある話だろう。
「おやすみ、桜」
布団に入れ、すーすーと寝息が聞こえてきたところで、起こさないように部屋を出てリビングへと戻る。
ソファーには対峙してるふたり。
俺が桜を寝かしつけてる間、ふたりは何の話をしていたんだろうか。
「桜、寝たよ」
「ありがとう」
「父さんもそのまま寝る?」
「そうしようかな」
大きな包装紙の中には、桜がきっと大喜びするものが入っている。
じゃあおやすみ、と俺たちに声をかけ、父は桜と同じ寝室へと向かっていった。
「クリスマスかー」
「だからって何もねぇけどな」
「この年になるとね」
恋人同士で会ってどうのこうのする日。
らしいけど、俺たちは割とそんなこと関係なく家に来て泊まるし、今日も別にそんなつもりもなかったし。
別段なんてことない、普通の日だった。
「そうだ、何か欲しいものある?今更だけど」
「ほんと今更だな」
「いいから」
「ねぇよ、別に」
「参考書程度だったら買える」
「いらねーっての」
「…じゃあアクセサリー系?」
「あー……とりあえず欲しいもの出来たら言う」
「わかった」
もうちょっと前々から計画しとけばよかったな。
つい桜に気を取られてたから、正直あんまり思いつかなかった。ごめん。
「部屋いくか」
「ん」
電気を消して、階段を上って。
部屋に入ったら、いつも通り。
……とは、流石に。
「…ちょっと蒼志さん」
「……何だよ」
「まさかそのまま寝る気」
流石に、クリスマスらしいことぐらいするだろうと思ってたら、あまりにも普通に蒼志は寝ようとしてたもんだから、こう、引き留めてしまうのは仕方ない。
いやだって、ほら。
俺だって男だし。
「蒼志さん」
「………」
「まさか君」
「………」
「クリスマスイブに」
「………」
「恋人が隣にいるっていうのに」
「………」
「ただ寝るだけですか」
「………」
「………」
「……お前、誘うならもっと可愛げある誘い方しろよ」
「…………狙ってたなお前」
「普通に寝る訳ねぇだろ」
寝そべっていた蒼志が俺の腕を引いて、その上に倒れこむ。
するとすぐに場所を反転させられて、覗くのは意地悪く笑った男の顔。
「声抑えとけよ」
「塞いでくれんなら」
「合格」
「どーも」
ああ馬鹿なことしてんなって。
思いながらも、この時間が好きだった。
*****
「んー…」
じりり、と携帯のアラームが鳴る。
学校は冬休みだけど、父さんはまだ仕事休みじゃない。
弁当作って、朝食作って。
うるさいアラームに手を伸ばすと、違うものが手にあたった。
「……は?」
眠い目を擦って手中に収まったそれを見る。
リボンとか、綺麗な包装紙で包まれた箱が、そこに。
携帯は相変わらずけたたましく声を上げている。
でも正直それどころじゃない。
「…気障っていうか、…」
気障って言うより。
多分、面と向かってプレゼントを渡すのが、はずかしかったのかもしれない。
隣でこのうるさい中普通に寝てられる癖に、変なとこ照れ屋だ。
「………うん、朝食作ろう」
このお返しは、今日中にしてやることにする。
身体に絡み付いてる腕をはずして、その重たい腕にそっと口付けた。
Merry Christmas(つーちゃん!さんたさんきた!)
(よかったねー)
(うん!)
(お兄ちゃんにもサンタさんきたよ)
(よかったねー!)
(うん、凄い嬉しい)
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