不シス 番外 | ナノ


▽何年後かのお話
▽いつぞやの別れ話(番外編:どうにかして)と似てるけど、司がさらに弱ってたら
▽Twitterのお題より

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「別に、お前の幸せなんか望んでねぇよ」

蒼志は俺を見下ろしながら、そっと、俺の首に手を宛てた。


未来が見えない。
先のことが、わからない。
男と男、結婚も出来ない、子供という繋がりも持てない。

その不安は、思いの外、子供と時間を共にすることの多い俺を追い詰めていたらしい。
よくわからないけれど、どうやら倒れて、それは精神的何とかが理由とかで。
その事実が、余計に俺にのしかかった。

「……ごめん」
「謝んな」

一日入院して、今日には退院、今後は大事を取って、暫く休職。
生活費はお互い折半で、今は貯金を崩すとしても、これから先は。
どれだけ、蒼志に迷惑を掛けるのだろうか。

「ごめん、」
「司」

今日だって、退院する俺に付き合って有給をとってくれた。
申し訳なくてもう一度謝ると、蒼志は溜息をついて俺の腕を掴んだ。
ぎりりと、息がくるしくなった。

子供が欲しくない訳でもない。でも、絶対的じゃなかった。
確固たる、繋がりがあればと、思ってしまったのがいけなかった。
浅ましい。
自己嫌悪が重なって、吐きそうになる。

「司」
「……ごめ、ん」
「お前を養うくらいどうってことない」
「そんなこと、させたくない」

女ではいたくなかった。
男で、男だからこうやって悩んでいる。
だから、そうなるつもりは。

そう思って蒼志を見上げると、掴んでいた腕をまた強く握って、思い詰めた、そんな顔をして、息を吐き出すと共に、その言葉を吐き出した。

「別に、お前の幸せなんて望んでねぇよ」
「な、に、」
「お前が苦しんでも、泣いても、何も出来なくなっても」

腕を掴んでいた手は首に宛てられて、真綿で絞めるみたいに、温かい熱に包まれる。

「俺は、俺以外の誰かにどうにかされるお前の幸せなんて、どうでもいい」

そんなもの。
そんなもの、ある訳ない。
そうだ、あるはずがない。

「だから、そのまま俺のところに居ればいい」
「……ん」
「死ぬまで」
「……こわ、なにそれ」
「そう言っとけば、安心すんだろ、お前」
「そんな単純じゃない」
「どうだか」

するりと手の拘束が解かれ、その腕は俺の身体に回った。
ああ、そうだ。
それだけで安心するよ。
馬鹿みたいに。
幸せだと、思ったよ。


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最近のふたりの少女漫画化について誰か。
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