公園に動物園がやってくる、というお決まりの言葉が書いてあるプリントが町内会の回覧板で回ってきた。
「らいおんさんいる!?」
「流石にライオンさんはいないかなぁ」
小さな移動動物園が近くの公園に来るらしく、桜は勿論行く気のようだ。
再来週の日曜日だし、父さんも行けると思うし。
「うさちゃんは!?」
「うさちゃんはいると思うよ」
「なでなでできる?」
「多分ね」
「わあい!」
まるで兎のようなぴょこぴょこ跳ねる桜マジ可愛い。天使。俺の元に舞い降りた可愛い天使。
「って訳で蒼志くん、緋里くん暇かな」
『俺は?』
「蒼志は決定事項」
『予定ないのかくらい聞けよ』
「あんの?」
『……ねぇけど』
「日曜は桜のために予定空けてるって知ってる」
『違う』
「え?」
『お前のため』
「………」
『………』
「………」
そこで思わず、電話を切ってしまった。
今日はこっちにいないから電話で軽い気持ちで聞いただけなのに、思わぬカウンターに顔が赤くなる。
何恥ずかしこと言ってんの、あいつ。
どうにもじっとしてられなくて布団に潜り込んで、当たり前のようにまた鳴る電話を取った。
『切るなよ』
「………」
『おい』
「…………蒼志いまどこいんの」
『あ?いつもの店だけど』
外であんなこと言ったとか、信じらんない。絶対近くで誰か聞いてただろ。馬鹿じゃねーの。
「そっち行く」
『は?』
「父さんに言ってくる」
『ちょっと待、』
もう一度無理矢理電話を切って、財布だけ引っつかんで、部屋を出る。
何か無性に、会わないと気が済まない、気がした、ような、気がする。
次の電話には絶対出てやらない。
「ばーか」
会って直接、文句言ってやる。
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