司は、よくにこにことへらへらと笑う。怒る姿は結構心臓に悪い。
あとごく稀に、泣く時もあった。
それは動物ものの感動なんとかを見たときだとか、有名な泣けると言われるアニメを見たときだとか。
一般的にそうなることを、司は一般的に行った。
ほぼ、大多数と一緒だった。
「……なに?」
「……何が」
「いや、こっちずっと見てたからさ」
部屋で本を読む司を眺めながらそう考えていたら気付かれたらしい。
別に、と答えれば、あっそう、と再び視線が本に戻って、ひとりまた司の姿を一方的に眺める。
「……蒼志ー」
それから、どれ位経っただろうか。恐らく五分と経っちゃいない、それ位短い時間。
司は本にくっついている紐をページに挟み、そっと閉めて、その場に置いた。
「こっち」
笑顔で手招きされたら、それに従うしかないだろう。
少し空いていた距離を詰め、向かい合う様に目の前に座る。
「……何だよ」
ぽすり、と、肩に司の頭が乗っかって、ぐりぐりと額を押し付けられた。
自然と余計に密着し、腰に手を回せば真似するみたいに司も俺の背中に腕を回す。
「暇になったから構って」
司の顔は見えないが、きっとまたあの緩い笑みを浮かべているに違いない。
怒る時は怒るし、泣く時は泣く。
大多数がそうなる時、司も大体そうなることが多い。
そのタイミングがわかってもわからなくても、全部が全部、心臓に悪かった。
だけど、この笑う時が一番、堪らないと思う。
温い身体を一層強く抱き留めて、構うことに、基、構ってもらうことに、しようか。
**********
本当は構って欲しかった蒼志くんと、そんな蒼志くんを甘やかす司くんでした。
top