▽お父さんとお母さんの話なので、NL注意
「いたたた」
「どうかした?平気かい?」
「大丈夫、動いてるだけよ」
ソファーに座る真弓の腹部は、半年位前はぺったんこだったと言うのに、今は大きく膨らんでいた。
あと一ヶ月もすれば産まれてくる、自分たちの子供。
「元気ねぇ」
「そんなに?」
「もうばんばん蹴ってくるわ」
男の子かしら、女の子かしら。
事前に性別を聞かず、どちらが産まれてくるのかを楽しそうに語る彼女の隣に座って、そっとそこに手を置いてみる。
「あ」
「ね?」
そこに居るんだとわかる程、手に伝わる流動。
「パパだって、わかるのかしら」
「どうだろうね」
「でもさっきよりはしゃいでる」
気付くと、彼女は母親の顔をしていた。
重ねた僕の手に、彼女もまた手を重ねて、にっこりと微笑んだ。
「元気に産まれておいで」
優しい時間を共に。
家族の存在が、僕にとって何より嬉しかった。
お父さんとお母さん(増えた家族と、)
(いなくなった君)
(それでも幸せは)
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