単純同性交際 | ナノ


メール画面を開く。何て打つか。迷う。

「さっきから何唸ってんだお前」
「あー…祐貴、お前明日何時くらいに戻ってくる」
「さあなー、早くて七時、遅かったらわかんねぇ」

だったら、七時半、でいいか。そう思って文字を打つ。
七時半。それだけの単語。に、俺の部屋、と追加して、メールを飛ばした。

「なるべく早く戻ってこい」
「何でだよ」
「……報告するから」
「は?」
「…………矢代に」
「……………ああ、あの人に」

その名前を出した祐貴が一瞬止まる。あいつを得意とする人間はそういないだろう。
俺でさえ得意ではない。
親衛隊の隊長としては恐ろしく優秀で、守って貰っている手前、口に出しては言えないが。

「だから早く帰ってこい」
「頑張るわ」



そう言ったくせに、七時半、祐貴は部屋に帰ってこなかった。ふざけんなあいつ。

「……麦茶でいいか」
「僕がやりますよ?」
「座ってろ」
「ありがとうございます」

時間通りに来た矢代は背筋良くソファーに腰かけている。
冷蔵庫に入っているペットボトルからふたつのグラスに麦茶を注ぎ、ローテーブルに置いて、…さて、どう始めたらいいか。

「今日、僕が呼ばれた理由は、最近の出来事についてでしょうか」
「…最近?」
「ご存じありませんか?圭登様と、会計様という名の駄犬が付き合っているという失礼極まりない噂のことです」
「………何だその噂」
「大分下火にはなりましたが、今でも水面下で囁かれていますよ」

吉川と、俺が。
あれか、あの話から、吉川が俺に絡んできた所為で尾ひれがついた、そんなところだろう。

「ではその話じゃないんですね?」
「ああ、…いや、当たらずとも、遠からず、か…?」
「……もしかして、あのクソ生意気な転入生じゃないですよね…?それともバカのひとつ覚えに後をつけることしか出来ない書記様?笑顔貼り付けて何を考えてるかわからない副会長様?シンクロさせないと何も言えない双子、」
「待て」
「すみません、口が過ぎました」

どうも矢代は俺を心酔しすぎている気がする。
ひとつ上の先輩ではあるが俺が先輩と呼ぼうとしたらマシンガントークでやめろと言ってきたし、今では本気で留年を考えているとぼそっと零されたことがあったのを思い出した。
だから、いずれ言うにせよ少し躊躇う部分があって。
祐貴がいたら説明する前に感じとるんじゃないかと思ったが、それも今は出来ない。

「……静谷だ」
「…………委員長様?」
「ああ」
「でも委員長様、姫菱の野郎と噂ありましたよね?」
「……あれも事情がな」
「圭登様」

だん、とローテーブルに両手が付かれ、グラスが揺れた。


「説明、してくださいますね」

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