どうにかこうにか日々を過ごし、気付けば体育祭当日になっていた。
正直な話、昨日の夜くらいから記憶がない。と言うのも、あまりにも疲れすぎて半分寝ながら仕事や応援団の練習をしていたからである。ハッと起きたら朝だった。
ちなみに三日前の俺と祐貴双方の記憶は消えて欲しいと思っている。
色々あったんだ。察しろ。
「白は毎年恒例だねぇ」
吉川がにやにやと笑いながら、俺を見てそう言った。
確かに俺が率いる白組応援団は、毎年変わらない格好をしている。
白い長ランに、白いズボン、それから白い手袋。鉢巻も当然白だから、全身真っ白だった。
日差しを弾いているから酷く眩しい集団である。
「そっちも恒例の火か」
「暑苦しいったらないよね」
赤組である吉川は、火を連想させるような真っ赤な和服のようなものを着ていた。真っ赤と言っても流石うちの学校というか、良い生地なのだろう、下品には見えない。
ただ吉川は髪はサイドをねじってピンで止めているからか、どうも遊び人の風体だった。
「黒はやっぱ恒例の燕尾服だってさ」
「毎年変わらなねぇな」
衣装自体は毎回応援団の人間に合わせて新調しているが、それでもそう変わらない、例年通りだ。
黒組である祐貴は吉川の言った通り燕尾服。
腹が立つ程似合うのは何となくわかる。
「青は海か」
「んーん、違うって」
「だったら空」
「や、それがね」
例年通り、と言っても青組だけは少しずつ違う。
俺が言ったように海や空が大半だが、毎年一番衣装が違うのはここだった。
だったら、何なんだ。
「あ」
吉川にそう問う前に、奴の目線が俺の後ろにいく。
話をしていた青組の人間がいるのかと思い振り返る、と。
「捕まえてやろうか、圭登」
そこには、警察官、……と言うより、軍服のようなものを着た男が、手錠を指に引っ掛け、にやりと笑っていた。
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