「……」
「……」
例のふたりと別れた後、祐貴は俺に後ろから抱き付いたまま、離れようとしなかった。
ただ一定の力で抱き締め、肩に顔を埋めたり、項にキスしてきたり、甘噛みしたり。
「まさか、こうなるとはな」
「……何が」
「去年、理事長のパソコンぶっ壊したの覚えてるだろ」
「ああ、あれは笑えた」
その位、違和感が拭えなかったのに、今はどうだ。
「俺、あの時から結構お前のこと、気に入ってたんだけど」
「初耳だ」
「今考えると、だけどな」
本当に嫌だったら適当に誤魔化してた、そう言う祐貴の顔が見えなくて、つまらない。
「祐貴、離せ」
「断る」
断言するな、馬鹿か。
まあ、離されないなら仕方ない。
籠められた腕の中で、動きにくいものの、何とか無理矢理身体を反転した。
「……だから離せっつったんだよ」
妙にしょげてる顔が驚きに変わって、それから笑顔を浮かべて。
「圭登」
更に抱き締める力が強くなったから、仕返しに、唇に噛みついておいた。
「なあ、押し倒して良い?」
「調子乗んな、馬鹿」
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