ぱちり。目を覚ます。
「……」
圭登は途端に夜中だか明け方だかのことを思い出し、死にたくなった。何だあれは。何をした自分は。確かに寝ぼけていたのだろう。何であんなことを言ったのか、何であんなことをしたのか、自分でも甚だ疑問だった。
「……」
ごろり。横を向いていた身体を反転させる。
「おはよう」
「…………」
ぱちり。彼と、目が合った。いつもだったら自分に背を向けていているような彼が、何故かこちらを向いて、にやりと笑っていた。何でだ。余計に死にたいと思った。
「……何でこっち見てんだ」
「や、何となく」
「……馬鹿か」
「かもな」
祐貴はけらりと笑い、よいしょ、と掛け声を発して、上半身を起こした。
「いやー、寝ぼけると可愛いなお前」
「目腐ってんだろお前」
「寝ぼけてなくても可愛いけど」
「脳味噌も腐ってんだろ」
「それはねーな」
ぽふぽふと頭を撫でてくる手を振り払い、圭登も怠い身体を無理矢理起こす。あの行為の所為で、ではなく、ただ寝起きで怠いだけだと言うのが余計に腹立たしい。変に慣れてしまっている。
「……」
着替えを始めている祐貴を余所に、圭登はぼうっと瞬きを繰り返す。
そして、はたと、気付く。
「祐貴」
「あー?」
彼が振り向いて、首を傾げる。
それと同じくして、ぐう、と腹が音を立てた。
「腹減った」
今度は本当に腹が減っているらしい。ぐるぐる、腹の中が動いている。
祐貴は圭登のそんな様子を見てまた笑い、身体を屈めて、圭登の唇を一噛みして。
「はいはい、何でも作ってやるよ」
ぽん、と頭を撫でてきたので、圭登は舌打ちして、がぶり、と唇を噛み返してやった。
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2016.03.21 J.GARDEN40 にて発行したコピー本の再録になります
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