ゆっくり、身体を反転させる。彼に背を向け、ゆっくり、深く、息を吐く。
ぴたり。彼の先端が、後孔に宛がわれる。
そして、ゆっくり、ゆっくり。時間を掛けて。
中に、埋まっていく。
「ん、ん……ッ」
太く、硬いものに侵食されていく。埋められていく。
「あー……熱っちぃ」
それはこちらの台詞だ。熱くて堪らない。苦しい。痛い訳でも辛い訳でもないのに、熱くて、ぞくぞくして、気持ち良くて、だから、苦しい。
「んっ、ぁ、あ、ゆ、き……っ」
「んー?」
もっと、欲しい、と。思った。のに、彼は、挿れただけで、一切動こうとはしなかった。
「今思いっ切りやったら、お前寝そうだし」
「は、ぁ……?」
「一回出してすっきり、そのままおやすみ、ってなりそう」
そんな馬鹿な。だが、完全な否定は出来なかった。確かに未だに少し眠い。頭がぼうっとする。一度出してしまったら、そのまま心地良く眠ってしまう可能性も全くないとは言い切れない。
「だから、ま、もうちょっとこのまま、な」
「ん、ん……っ」
ゆるく、普段では考えられないような緩慢な動き。彼の腰が揺らされる。少し出て、少し入って、繰り返される。
「ぁ、ん、んッ」
ああそれだけでも気持ちが良い。ゆっくり出て、入って、それだけでも、少しずつだけれど、満たされていく。普段通り思い切り突かれるのはもっと苦しくて、そして、もっと気持ちが良い。しかし、これだけでも、悪くはない。ゆっくりと徐々に競り上げられていくのも、気持ちが良い。
「だからって、これで、寝るなよ」
確かにこの緩やかな揺さぶりは眠気を誘うものかもしれない。試しに目を閉じてみたら、それに気付いたらしい祐貴に、がぶ、と項に噛み付かれる。
「寝るな、っつの」
寝てない、試してみただけだ。しかし圭登がそれを口にする前に、彼の腕が上着の裾の中から入ってきて、きゅうと胸の突起を抓まれた。
「ぁ……ッ!」
ぞくん。背筋に電気のようなものが流れる。予期せぬそれに驚いて、きゅっと後孔を締め付けたら、耳元で彼の笑い声が聞こえた。
「お前、こっち好きだもんなぁ」
「ち、がう……っ」
「何が違うんだか」
「ッや、ぁ、あ!」
親指と中指で突起を抓まれ、尖った先端を人差し指の腹で撫でられる。ぞわぞわ、痺れて、口から勝手に声が零れてしまう。唇を噛むことも出来なかった。噛もうとしたタイミングで、わざと奥の方まで彼自身が突き立てられる。いつもより激しくないはずなのに、それでもあまりにもタイミングが良すぎて。
「っん、あ、……っ、や、ぅ、……ん、んッ」
突起を弄られ、ゆるくゆるく、中を突かれ、時々首筋を舐められ、噛まれ、こんなにゆっくりなのに、徐々に、腹の底から、何かが湧き上がって来てしまう。
「ゆ、うき……ッ」
胸元にある彼の腕に手を添え、かり、と彼の肌に爪を立てる。くすりと笑い声が聞こえたから、多分、圭登の言いたいことはわかっているのだろう。でも彼は何も変えず、突起を弄ったまま、ゆるく腰を揺すってきた。
ぞわぞわする。ぞくぞくする。止まらない。競り上がって、くる。
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