遅かった、と、気付いたのも今である。けれど寝起きの、上手く働かない頭では抵抗すると言うことも浮かんでこない。遅かった、で、終ってしまった。
「っ、ぅ、あ……っ」
祐貴が体勢を動かしたことで少し捲れた掛布団。でも胸から下は相変わらず被ったままで。変に擦り下ろされたスウェットとパンツ。ローションで濡れた彼の指が、双丘の間を滑る。後孔の襞を伸ばされ、すぐに、つぷつぷと指先が中に入ってきた。
「……ッ」
「唇噛むなって」
噛み締めた唇の上に、彼の唇が触れる。閉じた唇をこじ開けられて、圭登が口を開いた瞬間。
「んぁ……っ!」
ずぷん、深くまで、彼の中指が奥まで埋まった。つい最近も使ったそこは自分が思っていたよりも柔らかったらしく、痛みは一切感じなかった。圧迫感も。彼の指が入ってきて、ぞくんと腹の奥底が疼く。
「っ、あ、ん、ん……ッ」
「噛むなって」
身体を更に引き寄せられ、鼻をがぶりと噛み付かれる。噛むなと言われても、自然とそうなってしまうのだから仕方ない。自分ではどうすることも出来ないのだ。
圭登からのそんな視線を感じとったのか、祐貴が苦笑を浮かべる。口をぱかりと薄く開けて舌を出したから、圭登もまた真似をして、口を開いて、彼の舌に己の舌を添えた。
「んっ、ぅ、んんッ」
自分の中で、彼の指が出入りしている。彼と舌を絡ませているから、自分の唇を噛むことはない。一本が慣れたら、二本目の指が入ってきて、前立腺のあたりを二本の指の腹で擦られた。ぞくん、ぞくん、と熱くなってくる。ゆるりと腰を揺らせば、硬いものが自身に触れた。
どうやら彼のもそんな気になっているようだ。圭登はびくつきそうになる身体をどうにか押込め、自分の中途半端に擦り下ろされた自分のスウェットとパンツを下ろして自身を取り出す。そして彼のスウェットとパンツの中に手を突っ込み、ずるりと彼のものも晒した。
「んっ」
祐貴がぴくりと肩を跳ねさせる。それに気を良くした圭登は、彼と自分のものを両手で握り込んで、ゆっくりと扱いていく。
「なに、こっちだけじゃ、足んねーの」
「っ、うる、さ……っ、ひ、ぁ、あ!」
それでも彼はどこか余裕そうに笑った。そして二本の指で前立腺を強く擦ってくる。びくびくと圭登の背が震え、とろり、先走りが溢れた。その先走りも指で掬い、彼のものにも絡めて、また扱く。彼の先端をぐりぐりと親指の腹で擦ったら、彼からも、先走りがこぷりと零れた。
「ん、ぁ、あッ、ぅ、……ッ」
中の指が三本に増える。ばらばらと不規則な動き。圭登が喉元を反らすと、そこをがぶりと柔く噛まれた。痛くはなかった。むしろ、心地良いと考えてしまったあたり、やはり頭が働いていないんだろうな、と他人事のように思った。一緒に扱いている双方の自身は、完全に硬く大きくなっていた。このまま擦り続けていけば、そう何分もしないうちに達する気がした。
「圭登」
しかし、彼はそれを許さなかった。中から指を引き抜き、圭登の手首を掴む。唇に一度軽く口付け、名前を呼んだ。
「後ろ、向け」
誰がそんな言葉、聞いてやるものか。
普段の圭登であれば、つんと顔を逸らしていたかもしれない。けれど、今の圭登は、むすりと唇を尖らせはしたけれど、素直に彼の言うことに従った。抵抗する、そのこと自体、頭の中にはなかった。どうでも良いとか言う諦めではなく、頭が働いていなかったから、自分でどうこう考えるのが面倒だったのだ。
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