「先生」
「あら、藤井くん、……丹澤くんも」
にっこりと笑った笑顔は、人を安心させる力があるのかもしれない。
「仲直り、したの?」
「はい、それで、あの」
「うん、良かったわね」
「……はい、」
このひとには、全てわかってしまったようだ。
丹澤は隣りで何と無く空気を察したようで、ありがとうございます、と笑っていた。
「また何かあったらおいでね」
「はい」
「……って言っても、私もそろそろ産休に入っちゃうから」
「え、」
産休に入るって、ことは、もしかして、もしかしなくても、そういうことだろうか。
「四月に生まれる予定なの」
「おめでとう、ございます」
「もし良かったら、生まれたらこの子に会いにきてあげてくれる?お兄ちゃんもいるんだけど」
先生の元に生まれる子供は、凄く幸せものだ。
俺は俺の母さんもとても立派なひとだと思うけど、先生も、とても。
「本当に、ありがとうございました、先生」
先生の指に揺れてる糸が、いつまでも途切れないことを、俺は、願う。
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