「母さん、行ってきます」
「いってらっしゃい」
母さんととうさんの間に結ばれた歪なそれは、まだ解けることはないだろう。
もし解けてしまったとき、俺は、何も出来ない。
でも大丈夫だと、思う。
きっと、大丈夫。
「よ!」
「……待ち伏せかよ」
「いいだろ、別に」
「いいけど」
紆余曲折あって、晴れてまあ、付き合うことになった俺たちは、何も心配することはない。
ということもなくて、大変なのは、これからだ。
男同士という壁は、厚くて、簡単に壊せるものだったらこんなに悩まなかったし。
喧嘩もするだろうし、すぐ別れてしまうかもしれない。
女性のもとに、行くかもしれない。
それでもどうしようもなく、俺たちはこうなった。
受け入れるしか、ないんだ。
「あ」
「ん?」
「保健室、行くわ」
「なんで?」
「保健室の先生に、色々、お世話になったから」
「……俺も行く」
「ん」
先生に報告して。
母さんととうさんに、いつか、まだそれは先になるかもしれないけど、報告して。
「………おい」
「なんだよー」
「ひと、いるかもしんないだろ」
「じゃあ、それまで」
右手で左手を取られて、あ、また、変に絡まった。
小指の赤い糸。
ビスみたいな夜end.
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