外が赤らんで、少し、遠くの方が濃くなったとき。
丹澤は、決心したように、口を開いた。
「……お前に、傍にいたくないって言われた時、すごい、傷ついた」
「………ごめん」
「何でそんなこと言うんだろうって、俺何か悪いことしたかなって、ずっと、ずっとさ、頭から布団かぶって、泣いて、でもそんな女々しいの見せるわけにもいかなくて」
「……」
「でもさ、よく、考えたら、俺、お前が彼女作るって言ったときも、本当はさ、すごい、傷ついてた」
「……なん、で」
「さあ、わかんねーけど、…俺が、いるのに、俺じゃ、駄目なのか、って、あの時は、ふざけて言ったけど、案外本心だったのかもしれない」
心臓が、痛い。
期待しそうになって、期待していいのかって、こんな。
こんなこと、あって、いいのかって。
「……藤井、ごめん」
「何が、」
「…気持ち悪いって、言った」
「……それが、普通だ、」
「それでも、……本当は」
否定したかっただけなんだ。
喜んだ自分を。嬉しいと思ってしまった自分を。
「あー、もう吹っ切れた!」
「え、」
途端に、赤くなってしまった目を細めて笑った丹澤に、俺は逆に目を見開いた。
「なあ、あれさ、告白って思っていいわけ?」
「………そう、じゃねぇの、一応」
「じゃあさっきの一旦無しな」
「……はあ?」
散々、人のことを何だかんだ言っておいて、…いや、それは俺の言えたことじゃないけど、だからって。
「藤井」
「何、」
名前を呼ばれた時、つい、と、小指が、引っ張られた、気がした。
「好きだよ、お前のこと」
揺れる赤い糸が、ぐちゃぐちゃに、絡まって、そこにあった。
いつの間にか、とか、どのタイミングでこうなってしまったのかわからないけれど。
ところどころが縒れて解れ掛けた細い部分も、俺が切ってしまった歪な断面も。
どこにあるのかわからないぐらい、それは、絡んでしまって。
「……っ、ばっか、やろ…、」
ああ、もう、解けなくなってしまった。
「なあ、藤井、返事は」
映画で言う、運命に翻弄された、のか、運命を勝ち取った、のか、その違いは、俺にはどっちでも、同じような気がした。
「…決まってんだろ、」
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