心臓を潰されたようだったけど、その言葉は、当たり前のことだと思った。
友達と思ってた奴から、好きだなんて。
裏切りにも、近い。
「…本気かよ」
「冗談で、言えると思うか」
「男だぞ、俺も、お前も」
「わかってる、」
何度だって、考えた。
何度も何度も。
諦めるために、糸だって切った。
それでも、どうしても。
「すき、なんだ」
目元が熱くなって、必死に歯を食いしばった。
最近泣いてばかりで、涙腺が壊れかけてしまっている。
「………なんで」
震えた声が、俺の耳に届く。
「……おれ、気持ち悪いって、言っただろ、」
丹澤は、拳を握りしめて、俯いたままだった。
「なのに、なんで…ッ」
好きって、言い続けるのか。
「…っわかんねぇよ……!」
俺も、わからないんだ。
「……なあ、藤井」
「………ん」
「俺、さ」
「うん」
「……女が、好き、で」
「うん」
「男なんて、好きじゃない」
「…知ってる」
「…気持ち悪い」
「……わかってる」
「なのに、なんで」
ぱちん、と小さな、何かが床に落下する音がして、もしかして自分が泣いてしまったのかと思った。
けれど頬が濡れている感覚もなくて、よく見たら、それは、丹澤の足元に、時折落ちす水滴の音だった。
「うれしいと、おもうんだろう」
乱暴に目元を拭って、鼻を啜って、掠れた声で、そう言う。
合わさった視線は、二人ともぼやけていて、変な距離が開いたまま、二人で、ただ、呆然と、これ以上泣かないように、立っていた。
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