ごめん、と言えば、それで、またいつもの関係に戻れる。
そう思っても、わだかまりは、残る。
だから、謝れない。
でも、謝らないといけない。
「丹澤、あのさ、」
出会って、声をかけて、こちらを振り向く彼。
冷たい目線、それから、どこかに行ってしまう背中。
突き放したのは全部自分なのに、後悔ばかりが募る。
ごめん、と言えば、言えればいいのに。
出来ないことはないのに、出来ない気がして、皆の中心にいる彼を見た。
小指から、誰とも繋がらない、赤い糸。
どうすれば、良かったんだろう。
自分のことになった途端、冷静に、考えることが出来なかった。
このままじゃ、駄目になる。
辛い。
……どうして、好きになったんだろう。
どうしても、好きになった。
好きになってしまったんだから、もう、戻れないんだ。
いつもの関係になんて、本当は、戻れないんだ。
だったら、いっそ。
「っ丹澤!」
糸なんかに頼らないで、言ってしまえばいい。
きっかけがそれだとしても、見えなくても、好きになっていたかもしれないんだから。
保身に走って、しまうよりは。
「…話が、あるんだ」
背中を追って、掴まえた。
簡単な、ことだった。
「……なに」
少しだけ驚いた顔は、何だか久々にみた気がした。
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