「……お前、馬鹿か」
吉川が怒っている理由がそこにあるとしたら、呆れてものが言えない。
「だって、会長ごはん食べないし!」
「こいつがいつも飯用意してたから、自分から食いに行く習慣がなくなっただけだ」
「……え?」
「は?」
「「え」」
「……?」
何だよ。
今まで黙ってた癖に何で他の奴らも反応しだすんだよ。
「で、でも、寝てない、」
「寝ろとか口うるさく言う奴がいないからな」
「……」
「……」
「「……」」
「……」
黙るな。
何なんだ、さっきから。
「だから、しおらしい理由は存在しない」
こいつの所為ではあるけど、仕事に逃げようだとか、そんなことがある訳無い。
そんなに、弱くない。
「っは、はは、何だそれ、俺中心に生きすぎだろ、お前」
無言の中、笑い声を上げるのは祐貴だった。
大体、ややこしくなったのはお前の世話焼き体質だ。
どうしてくれる。
「……なんか、それはそれでムカつくんですけどー」
「で、こいつ殴るのはどうするんだ」
「馬鹿らしいし、今はいいや」
あ、ただ、さ。
ソファーの背もたれに寄りかかり、紅茶を手にとって飲み込んでから、吉川はへらりと、いつものように笑った。
「明里、結構怒ってたから、いいんちょー気をつけてね」
「…げ」
「ああ見えて喧嘩強いの、知ってるでしょ」
そういえば、あいつしょっちゅう器物破損やらかしてたな。
壁にスプーン刺さるくらいだし。
「あーあ、かいちょー、攫っちゃえばよかった」
「やんねぇよ」
「でも、愛想つかされなくて、良かったね」
……本当は。
信じていたのか。
信じられなかったのか。
今も、わからない。
でも、こいつが。
ここに、戻ってきてくれるなら。
「祐貴から離れるつもりはねぇよ」
仕方ないから、この先も一緒に居てやろう。
それが、俺にとってマイナスであろうとプラスであろうと。
後悔するつもりは、ない。
絶対に。
――それこそ、単純な、話だ。
実は単純なんです
(ッ圭登!!)
(て、め、祐貴、あぶないだろうが!)
(あーあ)
(いちゃつくなら余所でやってよねー)
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