腰いてぇ…!
「圭登、具合悪そうだけど、大丈夫か…?」
「…気にすんな」
翌日、俺はまた例の激痛に悩まされていた。
理由?聞くな。
「それにその首のガーゼ、どうしたんです」
「痛、そう…」
「「会長平気ー?」」
「あー…気にすんな」
この傷はな、そこでへらへらしながら目が笑ってない男に噛まれて指で抉られた挙句、どっかの委員長に容赦なくまた噛まれて出来た傷だ。
「だいじょぶ?かいちょー」
「……ああ」
わかってんのかこの野郎、お前の所為だぞ、全部。
この腰と在らぬ所の痛み全部な…!
「顔色悪いみたいだしー、仕事一旦やめて、休憩にしよーよ」
「そうしよう、圭登!」
「コーヒーでいいですか?」
「…仕方ねぇな」
「「わーい」」
「一緒…久し、ぶり、……」
「皆一緒だと楽しいもんな!」
まあ偶にはいいか。
前回よりマシだと言ってもきついし、この休憩の分静谷と吉川に仕事流してやる。
「…あ」
「どうしました?」
「わり、電話だ」
ポケットに入っていた携帯が震え、ディスプレイに名前が浮き上がる。
ちらりと会計の姿を見ると、書記と双子と遊んでいた。…大丈夫か。
電話の内容を聞かれないように仮眠室に入り、耳元で通話に切り替えれば、案の定、静谷の声が響く。
「…何か用か」
『腰、大丈夫か?』
「なっ…お前の所為だろうが!」
『わかってる、謝んねぇけど』
「ふざけんな」
『それより、今そこに転入生と他の役員いるか』
「ああ、…それがどうした?」
『今からそっち行く、全員留めておけ』
「……また何かやらかしたか」
『いや、今からやらかす、俺が』
「はあ?」
『いいか、五分で行くからな』
ブツ、電話が切れて、通話が終了した音が鳴る。
やらかすって何だ。
首を傾げて生徒会室に戻ると、目を輝かせた細井に腰にタックルされて抱き付かれた。
ふざけんなぶっ殺すぞ。
「あ、あ、悪い!」
「……抱き付くな」
「ごめん…」
いちいちしおらしくすんな、男だろ、お前。
「なあ、圭登、今の誰からだ?」
「さあな」
「珍しいですね、貴方が」
「…あ?」
「いえ、何でもありません」
お替りいりますか、と少し冷めた、それでもまだ十分にコーヒーの入ったカップを指す。
いらない、と言えば、そうですか、と返される。妙に気を使うところは変わっていないらしい。
そういえば、これが日常だったな、何て柄にもないことを思って、そのカップに手を伸ばした。
と、同時にノックの音。
結局コーヒーは減らない。
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