side 祐貴
「ああ、逃げなかったんだな」
「……うるせぇ」
夕方、生徒会室の扉をノックして開けると、嫌そうな顔をした板垣が座っていた。
メールを送ったのは、多分正解だったんだろう。負けず嫌いの人間だからなぁ、こいつ。
机の上に積んである仕事を何枚か捲ってみて、それは明日でも片付けられる書類。
…へぇ、今日の分は終わらせてあんのか、ちゃんと。
「飯、好きなの作ってやるから」
「…………焼き魚」
「りょーかい」
渋々立つ姿から、やっぱり乗り気じゃないってのはわかる。そりゃタチやってきた人間にネコやれって、結構酷な話だ。
だからって俺は譲るつもりもねぇけど。
「行くぞ、板垣」
「……」
んな死にそうな顔すんな、酷い様にはしねぇから。
「そんなに嫌か」
「…………、」
飯作って食って風呂入って、ベッドに連れてきて互いに向かい合って座って、さあ準備万端、てところで。
キスしようとしたら顔を逸らされた。
何度も言うが、そんなに嫌か。
視線を逸らしたままの圭登をじっと見つめ続けると、そろり、観念したようにこちらをちらりと見た。
「………別に、」
「ん?」
「お前とシたくねぇとか、そういうんじゃ、無い」
「…ああ」
「ただ、……、」
圭登は開いた口を再び閉ざし、俺を一度睨みつけ、それから、俯いて、俺のシャツの袖を少しだけ引っ張って。
「……わかれ、ばか」
…はっきり言おう。
こいつ可愛すぎて俺死ねる。
よく今まで他の奴に襲われなかったな、いや襲わせねぇけど、つーか、だって、おま、今の完全に誘う動作だろ…ッ!
きっとこいつは、怖いんだとか、恥ずかしいんだとか、そういうのが勝って、わかんなくなって、拒否してる。
…可愛いな。
「圭登」
「………」
「任せとけばいいから」
「………」
「気持ちよーくさせてやるから、ただ喘いでろ」
「………しね」
小さく息を吐いて、少しだけ肩の力が抜けたのがわかったので、リップノイズ鳴らして俯き顔にキスしてやったら、むすっとした圭登に軽く頬を抓られた。
あーあ、俺いつか、ほんとに殺されるわ。
実は怖いんです
(優しくする)
(ん)
(……)(こくんて、こくんって…!)
← top →