「明里、これどうかなぁ」
「あかり…こっち、…」
「明里」
「「明里ー!」」
明里、明里明里明里あかりアカリ。
「うるせぇんだよさっきから…っ!」
やらないといけない仕事はあって、いくら役員共が少しはやるようになったからと言ってここで遊んで良い理由にはならない。
それにこちとら精神的に大ダメージを受けてんのに、脳天気に笑ってやがるところがイラつくんだよ…!
八つ当たり?っは、上等だ。
ちなみに俺の名誉のために言っておくが、まだ掘られていない。あの後静谷のを抜いてやって、疲れたからそのまま寝た。
静谷はぶすくれた顔してたけどな。
「出て行け」
「かいちょー、ちょっとくらい、」
「黙れ問答無用で仕事増やすぞいくらでも仕事はあるんだ」
「「うぇー…ごめんなさぁい」」
「他、行こ…」
「明里、出ましょうか」
「で、でも!」
「さっさと行け、目障りだ」
「会長、そんな言い方無いでしょう?」
ここで馬鹿やってるお前らが悪い。
「良いんだ、騒いじゃった俺たちが悪いんだし、……ごめんな、圭登…」
…何だそのしおらしい振る舞いは。
完全に俺の方が悪くなってるだろ、それ。
黙々と出て行こうとする面子に、呆れて仕方ない。
学園は、こいつらに荒らされたお陰で、今平穏な状態ではなくなった。
ただ少しは反省したのか何なのか、仕事をしたりだとか器物破損の被害が少なくなったのは、……いや認めるっておかしいだろ、そもそも全原因はこいつだ。
とにかく。
やっとマシになったこの状態をこれ以上悪化させるのは非常に不味い。
こいつらの不注意具合は特に、場合を考えないと火に油を注ぐ結果になる。
「………細井」
「へ?」
「後ろ、髪出てんぞ」
「え、……あ、あ!」
しょぼくれて出て行こうと後ろを向いた細井の黒髪から覗く金糸は、恐らく奴が持つ本来の色だろう。
隠す気ならきちんと仕舞っとけ。
また火種を投下する気か。
「あなた気付いていたんですか」
「気付かないとか馬鹿か」
あんな髪普通じゃ有り得ねぇし、分厚い眼鏡の下の瞳もよく見れば緑掛かった色をしている。
色々な付属品を取り払えばここでも通用する顔だが、奴が隠したいんだったら、俺は何か言う立場ではない。
「け、圭登!」
「何か用か」
「その、えっと、あ、ありがとな!」
「…………ああ」
きらきらした目で見るな、胸くそ悪ぃ。
「いい加減にしないと風紀来るぞ」
「げ!…じゃあな、圭登!」
足早に出て行く連中に、だからどれだけ風紀が怖いんだって言う。
「………」
ひとりになった途端、溜め息が深くなった。
携帯を開けば先程来たメールがそのまま画面に残っている。
「…………馬鹿か」
見透かしてんじゃねぇよ、あの野郎。
実は逃げたいんです
(逃げる前に迎えに行く、とか)
(そんなメール、寄越したら普通逃げるだろ)
(………くそ)
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