「ただいま」
「おかえり」
「おかえりー」
「鈴…お前また勝手に……」
「大輔に入れてもらったし」
「鈴さんが扉開けてさっさか入ってきたんじゃないですか」
「やっぱりか」
「ちぇ、でも今来たばっかだよ、本当に」
「鈴、大輔にちょっかい出してないだろうな」
「え?ほっぺにかるーくキスしただけ」
「鈴!」
「鈴さん、嘘つくのやめて下さい」
俺達の不思議な関係は、今もまだ、より複雑な関係となって残っている。
鈴さんは、もう尚人を恋愛感情として好きという訳では無いらしいし、俺が居ない時に尚人の家に上がったりはしていない。と、鈴さんも尚人も言っていた。
それはとてもありがたい。疑うつもりはないけれど、俺は広い心の持ち主ではないから。
ただ、案外俺も、ひとのこと言えないんじゃないか、とも思う。
鈴さんと二人きりで会うつもりは無い。それでも、さっきだって、尚人が帰ってくるまでの数分間、密室に二人で居たわけだから。
「鈴さん」
「んー?」
「来るときは、俺達両方がいるときにして下さいね」
はっきりと口に出せば、鈴さんは初めて会った時より、ずっと柔らかい顔をして頷き、呟いた。
「それって3Pのお誘い?」
「鈴!」
「鈴さん!」
この関係は、いつか終わりを迎えるのだろうか。
それまでは、この不思議な空気を、楽しむのも悪くはないのかもしれない。
end.
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