「総長」
「あー?」
「今日、あいつ来ないんすか?」
似たような仲間が集まる店内で、聖は一人アルコールを流し込んだ。
公園で博之と言葉を交わしてから、一ヶ月になる。
あの後から、自分達は、それでも変わろうとしなかった。
どんな関係なのかと聞かれたら、付き合っているとも言えるし、そうじゃないとも言える。
好きだとか愛してるだとかの言葉もないまま、一緒に居たり、体を重ねることを繰り返した。
「今日は来ねぇよ」
「珍しいっすね」
「そうか?」
「だって総長、何か機嫌良さそうだから」
「っは、違いねぇわ」
小さく挨拶をして離れていく仲間のひとりは、意外と鋭い目を持っていたらしい。
変わらない中で、唯一変わったところ。
それは本当に馬鹿らしい、告白よりも恥ずかしい好意。
「あー…痛ぇ」
背中の爪跡と、首筋の噛跡。
疼いた跡に、笑みを浮かべた聖は、博之の昨日を思い出した。
シャルトリューと朝食end.
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