「お前さぁ、ホント最近、俺の話聞かないよな」
「そんなつもり、ねぇけど」
「窓の外ばっか見てるくせに」
「…そうか?」
「自分で気付いてねぇのかよ」
ファミレスの窓際。禁煙席。二人とも煙草の煙も臭いも平気だったけれど、好んでいるわけじゃなかった。こんな、不良なんて呼ばれてる俺らがな、と、互いに笑いあったのは、いつだったか。
照らされる雑踏に、気付くと博之は目を向けて、まるで現実から逃げていくように何かを遮断する。
いつからこんな癖がついたんだろう。
そこから考えてしまえばまた彼の話を聞かなくなってしまう。軽く自分の頭を揺すって、聖に目を合わせた。
小さくため息を付かれる。その様子でさえ、彼が自分をどう思ってるのかを容易に想像できて、眉間に力が入った。
「何か、俺に言いたいことでもあんの」
「……自惚れんな」
「可愛くねぇやつ」
俺に、可愛げがあって溜まるか―――
そう、いつもなら切り替えしている。そして、そう口にしようとする。それなのに、言葉は、出てこない。どうして。
可愛さだとか、従順さだとか、そんなものを求めるなら、女の尻でも追っかければ良い。
自分じゃなくていいだろう、自分じゃなくたって、例え、女じゃなくても、そう、自分以外の、…男、だって。
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