サバイバーズ

その日私は家には帰りたくなかった。ブランコの上でブログを更新して暇つぶししていた。
するとそこに公園の入り口にゴツいバイクを停めたスタイルのいい少年が近づいてきた。金髪に黒のメッシュ。甘いマスク。同じクラスの羽宮一虎だ。
「こ、こんばんは羽宮さん」
一虎の首の虎は月明かりに照らされて私を睨んでいる。
「あ、ああ同じクラスの…こんな遅くまで何してんのもう12時だよ」
心配するような目で見てくる。
「羽宮さんこそ…」
小声で毒づいてしまった。
「中島さんが深夜にうろついてるのと俺とは違うじゃん。コーラかファンタグレープ。どっちにする」
「ファンタで…ありがとうございます」
一虎はファンタのペットボトルを投げてきた。
「ああ、炭酸がぁ」
案の定、封を開けるとファンタが溢れてきた。
「でも、ファンタとか久しぶりかも」
一虎は目を見開いた。
「じゃあ、どういうの飲むの」
「100%のジュースしかお父さんが認めないんです」
「あっそ」
一虎はコーラを飲んだ。まつげで瞳が陰った。
「なんで、家に帰りたくないの」
「なんで、私が家に帰りたくないって決めつけるんですか」
「なんとなく、勘」
一虎はとても悲しい顔をしていた。
「塾のテストで総合的20点下がって、下のクラスに落とされるんです。で、成績が悪くなると絶対お父さんに叩かれるんです」
なぜか私は矢継ぎ早に話していた。もう一虎とは合わないと思ったからだろうか。太ももの青痣も見せていた。
「子供を殴る親は親なんかじゃねえ、敵だ」
ぞっとするほど死んだ目で一虎は見つめてきた。
「塾のない日遊んでやるよ」
「その日は復習しなきゃ怒られる…」
「いいんだよ。あぶねーから家まで送ってってやる」
とバイクのサドルからフルフェイスのヘルメットを出した。
「一虎さんもヘルメット持ってるんですね」
「大切な愛娘が怪我したら大変だろ、ほら」
一虎は私の家まで送ってくれた。

案の定、お父さんにはテストの点数を見せられて叩かれた。




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