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その人は時々ファミレスのに来てコーンフレークでごまかした安いいちごパフェだけをいつも頼んでいた。
その日もいつものようにいちごパフェを食べたあと、パチンコ雑誌を読みながら時間を潰していた。平日の4時、立地の悪いこのファミレスには、近所のおばさんか女子高生がポツリポツリと埋めているだけだ。
その人は赤い箱からタバコを取り出すと、服に付いてるすべてのポケットを調べ始めた。
「ライター、使ってもいいですよ」
「いいのかよ、意外だな」
怪訝な顔でライターでタバコに火をつけた。
「それ、忘れ物なんで、お会計の時返してください」
「ああ」
と返事が聞こえたら、黒い長髪で表情が見えなくなった。
「藤原さん、意外と親切じゃないの。いつも事務的なのにね」
店長が声かけてきた。さっきの行動を思い出し、一人で恥ずかしくなっていた。
「12番さんお会計です」
「はーい」
急いでレジの方に向かう。
「840円です。レシート…要らなかったですよね」
「覚えててくれたのか。あとライター、助かった」
「内緒ですからね。タバコ、体に悪いからやめた方がいいですよ」
「あーはいはい」
あの人は苦笑いした。
「またのご来店をお待ちしています」
珍しく、後ろ姿を見ていたら私のことをさっしたのか手を振ってくれた。

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