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「じゃあ、そろそろお会計…」
「その前に一服させて」
といって佐原は胸ポケットからライターとタバコを取り出した。見ればそのライター、「thank you」と印刷されており、紛れもなく私のものだった。
「あけみさんは吸わないんすか」
「それより、佐原くんは帰り道どうするの」
「自転車があるから。ここバイト先に近いんすよね。まあ、今日は合コンがあって」
「収穫なしってわけか」
私はなんとなくナンパしてきた理由がありきたりで笑った。
***
「私、おもくなぁい」
「全然余裕ですね」
私は流されて、佐原の自転車の荷台につかまっていた。
「しっかりつかまってくださいよ」
佐原の筋肉質な腰を握り直すと、これでもこの人は男の子なんだなぁと感じていた。
「着いたっす。ここが俺の住んでるところ」
そう言われて見上げたら、空色のコーポが薄暗くそびえ立っていた。



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