こんばんは名前変換( 3/56 )




私は引っ越ししてきた青年のことは忘れて、相変わらず授業は退屈で、サークルの部室ではダラダラ喋ってばかりいた。まだまだ夜も冷え込むと学習しない私はコートを忘れていたことを後悔しながら急いで帰っていた。アパートの階段を登ろうとすると、先に人がおりてこようとしていた。安アパートのためすれ違うこともできず、私はその人降りてくるのを待った。切れかけの街灯に照らされ、白い髪の毛がぼんやりと光って見えた。平山さんだ。はじめてあって時と変わらず、派手なスーツをパリッと着こなしていた。このボロアパートも、錆びた階段も全部平山さんのために用意された舞台装置のような錯覚を覚えた。
「すみませんね」
すれ違い様に声をかけられた。
平山さんの残り香は、いつも一緒にいる男子と違う、香水とタバコと夜の匂いだった。



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