こんばんは名前変換( 56/56 )




そこには幸雄がいた。
いつもの胸の空いたテロテロの柄シャツにストライプの派手なスーツではなかった。白い長袖のシャツを腕まくりして、地味なネクタイをしていた。サングラスもメガネに変え、もっとも特徴的だった白い髪の毛も、黒く染めてある。
「イメチェンなの」
「ゆき聞いてくれ」
幸雄は立って大声を出した。
「俺は組と縁を切った。金で話をつけてきた。俺の右手はこうなったからもう二度と代打ちはできない」
といって包帯だらけの右手を挙げた。
「俺はカタギになる。俺と一緒にいたら苦労する。でも、絶対に幸せにする。だからゆき大学を卒業したら結婚してくれないか」
そう言って指輪の箱とバラを一輪差し出してきた。
「…喜んで」
幸雄は指輪の箱を開けて中の指を私の薬指にはめた。
「ぴったりだ」
「でも幸雄がバラなんて渡してきたのは意外だった」
「花とか全然わかんねぇけど1番綺麗なやつ選んできたから」
幸雄は自信満々に言った。
「私の友達が、繁華街で黒い髪の毛をした幸雄を見たって言ってたんだけど」
「婚約指輪と花は綺麗な金で買ったやつをゆきにあげたかったから。10日間くらいずっと知り合いのバーの手伝いしてた」
「怪我してるのに無理しちゃって…」
強引に口を塞がれた。
「これ、誓いのキスだから」
木の下で三毛猫が眠たそうに眺めていた。




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