そこには麻雀の話も金の話も載っていなかった。ただ神経質そうな万年筆の文字で私との思い出が綴られていた。
初めて私に一目惚れしたコンビニで出会った日、避けられているのが自分の職業のせいだと少し後悔している日、私に告白されたのにどうしても断らなくちゃいけなかった苛立ち、キーケースを選ぶのにたくさん悩んだこと、私の作った食べかけの手料理の写真も挟んであった。
最後、この勝負で勝ってカタギになってゆきに告白しようと走り書きされていた。
***
そんな無茶しなくてよかった。幸雄がヤクザと付き合っててもいい。だから、幸雄に生きていて欲しかった。
そして、私が幸雄にこんなにも愛されていたなんてこと。私は知らなかった。生きてる間に教えて欲しかったよ幸雄。
涙はとめどなく溢れ、ノートのインクを滲ませた。
了
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