こんばんは名前変換( 52/56 )




ピーンポーン
チャイムが鳴った。フラフラの体を奮い立たせながらドアを開けた。そこには見知った人がいた。
「以前どこかで…」
「ああ、夏祭りの時にな。安岡だ。今日は平山の知人として井上さんに会いにきた。渡したいものもあるし上がってもいいか」
「はい」
緑のチェックのスーツをきた恰幅のいいおじさん。この人が幸雄の知人。
「井上さんはあまり聞きたくない話だと思うがね、平山には身内がいない。遺骨を取りに来る人もいなかった。だから、火葬だけして無縁仏として祀られた、この話はこれでいいな」
「はい」
「一応これでもおまわりだからなそこあたりは分かっているんだ」
無縁仏になった幸雄のことを考えるとたまらなく苦しくなった。
「そして、ここからは平山の知人としての話だ。平山にはおそらく井上さんしか女はいなかった。だから、これは井上さんに渡すべきだろう」
丁寧にデパートの紙袋に入った、女もののジャケット、ワンピース、2ピースのドレス。そして、リングノートと万年筆。
「ありがとうございます。安岡さんにとって幸雄はどういう人間でしたか」
「見たこともないぐらい清々しいぐらいに愚直でかっこいい奴だったよ」
「そうですか」
「井上さんはもうちょっとちゃんと休んだ方がいい。やつれ過ぎだ」
安岡さんは去って行った。



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