こんばんは名前変換( 40/56 )




「俺、やり方わかねえんだけど」
「そのための説明書じゃん」
「俺、今耳が痛いんだけど」
「知らないー」
私がニッと笑うと、幸雄は困った顔をして、ティッシュと消毒液を手に取った。
「失敗しても責任取らねえからな」
「うん、ここら辺にして」
と右耳の耳たぶの上の方を指差す。
「これで、いいか」
「うん、オッケー」
耳たぶに針が当たる感触が伝わる。どうにも震えているようだ。
ガシャン
「いっ…」
「うわぁ、大丈夫か」
私は鏡を見ながら
「うんうんいい感じ」
少しずつ耳たぶがジンジン痛くなってきたけれど。
「うわぁ、開ける方が心臓破裂するかと思ったぜ」
「幸雄って意外とビビりなの」
「いや、ゆきの痛覚が死んでるだけ」
「失礼な。ねえねえ、似合ってるかな」
幸雄は私の髪の毛をめくり上げて
「うん、似合ってる。でも、これ以上開けるなよ」
とおでこをコツンと合わせられた。
***
「でさぁ、なんでグロスはすぐに買っちゃったの」
「ないしょ」
そういいながらタバコを咥え、ジッポを取り出した。
「また秘密主義」
と幸雄の背中を揺すった。
「ゴホッ、ゴホッ。あっぶねーよ。あの時のこと思い出したから」
「あの時って」
幸雄は大きく息を吸って、白い息を吹いた。
「あの、車ん中でキ…ス。した時のお前の唇を思い出してさ…悪いか!」
灰皿に灰を落とす。そして、目があった瞬間自然にゆっくりお互い唇をかさねる。苦かった。ねえ、幸雄、私たち、こんなことしていても「お友達」なの。安産祈願片手に笑っていた幼馴染の顔がふいに頭をよぎった。



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